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職人好き

職人好きである。

職人的仕事をする人も好きだ。

要は「職人気質」が好きなのだ。

己が道を信ずるからブランドとか世の評判にぶれることもない。

無論はじめからそうだったわけではあるまい。

そこへ行きつくまでには諸々の葛藤や紆余曲折、人知れぬ揺れもあったに違いない。

が、ひとたび迷いが消え失せればただひたすら道を進んでゆく。

徹し切る、無心につくる、だから人の心に響くものが生まれるのではないだろうか。

先日の浅草和装塾で次代を担う職人の話を聞く機会があった。

錺簪(かざりかんざし)の三浦孝之さんと市松人形の藤村紫雲さん。

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藤村さんの市松人形

お人形というとガラスケースに入っているイメージがあるが、実は単なる飾りものにあらず。

身体の部分は腕、脚、足首がすべて動くようになっているので正座や足を投げ出した子供座りもできる。

着物や帯はすべて着せかえられる(ということは着付けが必要=子供が遊びながら学ぶ)。

絞りの帯揚げ、丸ぐけの帯締め、振袖にはなんと襦袢の袖まで付いているではないか。

捨てられない愛着ある着物がお人形の着物になることもあるそうだ。

伝統工芸を受け継ぐというと何から何まで、厳しい修行を想像しがちだが、藤村さんによれば親から教えられたのは技としての技術だけだという。

お人形のフォルムや表情などは案外自由で、個人の感性に委ねられるらしい。

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三浦さんの簪と髪飾り

三代つづいた錺簪職人の三浦さんはグラフィックデザインからの途中転身だ。

歌舞伎や日本舞踊で使う髪飾りを作る人が一時途絶えてしまい、床山さんからの依頼で古いものを見ながら試行錯誤の制作が始まったとか。

子供の頃から小さな動植物が好きでよく観察していたそうで、古典柄のほかに自然をモチーフにした作品も多い。

Kame

左の亀、 足や首が動きます!

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家紋の髪飾りと真鍮を透かし彫りした櫛

気の遠くなるような麻の葉…

伝統工芸といってもやはり時代による変化もある。

たとえば三浦さんの手掛ける歌舞伎の簪も昔と比べると小ぶりになったという。

役者さんが昔よりスマート・小顔になったせいでこれまでの大きさではバランスが悪いからだ。

普通の簪もあっさり、ライトテイストに。

たしかに今の軽快なアップスタイルにはずっしりボリュームのある日本髪の簪は重くて支えられないだろう。

そういった時代の流れには臨機応変な三浦さんだが、譲れない面もある。

髪から外した時にも「物」として美しくなければというこだわりだ。

もっと短くの注文に、でもこの短さだと不格好でしょ、と実際に見せてもらったらたしかに変(笑)

用の美を追求する職人の哲学といえるだろう。

かける手間と時間、その対価、およそ効率とか採算には程遠い世界である。

平たくいって「割に合わない」のが職人仕事だ。

なり手がどんどん減るのも不思議ではない。

だけどどこへ行っても同じ、何を持ってもみな同じ、ってそりゃあつまらないでしょ。

私はつまらない、全~然面白くない。

人の手技に為る美しいものを持って、それを長く大事に使ってゆきたい。

まあ金に糸目をつけず、なんて鷹揚なことは絶対言えないプチな使い手だけど。

着物を着るようになってからは職人仕事をさらに身近に感じることが多い。

帯締めは締めてみればその良し悪しが歴然とする。

捺染プリントと手で型染めされた江戸小紋の深みの差!!

今年は辻屋さんの企画で新しい時代の職人さんたちに会える機会も増えそうだ。

ひとり、せいぜい数人の伝統工芸を受け継ぐ職人のつくるものが単に文化財・美術品的に残っていくだけでは淋しい。

身近なところへ取り入れて用いることから始めてみよう。

なにかひとつ、小さなものでもきっと心を豊かにしてくれる。

ああだこうだと言いながら自分もその物づくりに参加できたりしたらもっと楽しいにちがいない♪

☆☆☆ INFORMATION ☆☆☆

かざり工芸三浦(墨田区伝統工芸保存会) 

http://www.hozonkai.com

人形工房 紫雲 

http://www.eva.hi-ho.ne.jp/shiun

どちらも個人の誂えが可能です。

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2年前の「龍馬伝」に使われた櫛と簪は三浦さんの作品

この観世水を透かし彫りした帯留を誂てもらうぞ!

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